久しぶりに、ブログを更新しようかと。寒くなりましたね・・
最近はコロナの自粛生活になじんだせいか、週に2-3本は映画を家で鑑賞しています。
今日は、全然単調なストーリーなわりになんだか描写や演出が絶妙だな、と思った作品。
今日は、映画「希望の灯り」(原題『In den Gangen』)を鑑賞。
■-目次-■
作品概要
【日本公開】
2018年
【原題】
『In den Gangen』
【原作】
クレメンス・マイヤー
【監督】
トーマス・ステューバー
【脚本】
クレメンス・マイヤー
【キャスト】
フランツ・ロゴフスキクリスティアン サンドラ・フラーマリオン ペーター・クルトブルーノ アンドレアス・レオポルトルディ ミヒャエル・シュペヒトクラウス ラモナ・クンツェ=リブノウイリーナ ヘニング・ペカー マティアス・ブレンナー クレメンス・マイヤー
あらすじ概要(ネタばれ注意)
ここから下はネタバレになるので、これから鑑賞を楽しまれたい方はご注意を・・
米ソ冷戦の終結の象徴であるベルリンの壁崩壊、東西ドイツ統一によってもたらされた人々のその後と新しい時代に生まれ、生きていく若者の姿をスーパーマーケットを舞台に描いた作品。
私の感想
私は映画を鑑賞する前にはあまりレビューを観ないようにしていますが、映画を鑑賞し終わった後、その映画のレビューをいろいろみて、自分が思ったこととの比較をすることが多いのですが。
一つ、気になるコメントを観たのです。「目隠しのウサギはどういう意味か?といったメタファーがわかったうえでもう一度鑑賞すれば、全然違った映画に思える」・・このコメントを読み、私は一度観た映画を再度再生したのです。そうすると、確かに
なぜかクリスティアンの近況を知っているマリオン、なぜかマリオンの家の事情を知っているブルーノ
この映画については、労働者階級の質素な暮らしぶりや、その狭い環境の中で淡々と働いている人々の様子を、静かに描いている映画、心温まる映画、と言っているコメントが多いのですが。
実は、私はこの映画を見ているときに、「ブルーノとマリオンは、関係があるな?」というのをふつふつと思っていたんです。
だって、スーパーのお菓子担当で他の場所に出てこないマリオンは、なぜか、ブルーノしか知りえないようなクリスティアンの近況を知っていたり、DVにあっているという話をしながらも、実際にマリオンにはDV被害にあっているような様子が見えない。
ウサギの意味
海外の映画には、西洋絵画に見られるような象徴的要素が非常に多く登場しますよね。これは、セリフが多くストーリーの多くをセリフを通して理解させる邦画と大きく違っている点だと思っています。ウサギは西洋絵画でもよく登場する要素。ウサギには、「愛」のような意味もあれば、「色欲」の意味もあります。
この映画に頻繁に登場する、むしろ中心的存在ともいえるフォークリフトにつけられている、目隠しをしたウサギのぬいぐるみ。
クリスティアンがマリオンの家に行った後にゲームセンターのUFOキャッチャーでゲットしたウサギのぬいぐるみ。
監督は、これにどのような意味を込めたのか・・これは美術好きの方は深く考察されるんではないでしょうか。(実は私も学生時代、こういった西洋絵画の象徴解釈の本をよく読んでいたのですが・・)
ブルーノって、優しいのか怖いのか・・
この映画レビューコメントを見ていると「社会再生を望むクリスティアンと、それを見守る温かいブルーノ」についての感想が多く語られていますが、確かにそのような一面も垣間見えるシーンもあるのですが、優しいだけじゃない、他の感情からクリスティアンのことを見守って(見て)いるのではないかな、と考えさせられるシーンが多くありました。
冒頭部分、クリスティアンがマリオンに一目ぼれしたことに勘づき始めたとき。ブルーノは、おせっかいにも「マリオンはやめておけ」といいます。まぁ、この時は、マリオンが既婚者がであることもあるのでまだわかる。しかし、それが結構しつこいな、とちょっとした違和感を感じるんですよね。「旦那はひどいDV」「時にはかなり激しく」といった言葉から、そんなところまで、職場の同僚同士が把握しているものかな?という。
クリスティアンは、このスーパーでの仕事を通して、ブルーノに見守られながらもフォークリフトの運転をマスターしていくのですが、この中で、少し優しいとも冷たいとも何とも言えない表情をしているシーンがあります。それは、ブルーノが見守る中フォークリフトの扱いに慣れないクリスティアンが、棚の上部分の荷物を下す時、どう考えてもぐらついていて危うく荷物が落ちそうなのですが、それをすぐさま止めるでもなく、少し冷静な目で見つめているんですよね。途中で止めてクリスティアンと代わって自分が運転するんですが、それを言い出すタイミングが少し遅いという。私はちょっと、悪い想像をしてしまったのです。
マリオンの影?
冒頭部分でクリスティアンがフォークリフト上で見つけた、指輪。マリオンはなぜだかいつも、話してもいないのにいつもクリスティアンの近況を知っている。マリオンって一筋縄ではいかなさそうな女性だな、と最初に感じたのは、冒頭部分、クリスティアンと初対面で、自販機の前で一緒にコーヒーを飲んでいるシーン。初対面の人相手にほとんど言葉を発さないクリスティアンに対して「あなたはおしゃべりで面白い人」と言いながら微笑むんですよね。さらに、クリスティアンがスーパーの廃棄ゴミから探し出した新品のチョコレートケーキを誕生日プレゼントとして受け取りながらも、「美味しい。どこのケーキかしら」(スーパーのお菓子担当だから当然知っている商品と思われる)と笑いながら食べるマリオン。
とはいえ、ブルーノの最後は非常に悲しいものなのですが。
とどのつまりは、静謐で温かい映画、と言われている裏でも、描かれている要素や、登場人物が発する言葉や表情を読み解いていくとまた違ったストーリーが見えてくる非常に感慨深い作品ということで、セリフ以外の何らかの要素からストーリーの裏を読みたい人にはお勧めの映画作品かなと思います。
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