こんばんは。まだまだ空気が冷えている今日この頃。
本日は、事例Ⅱの解説を行います。
このコースで学べる事
- 中小企業診断士二次試験事例Ⅱ合格に必要な基礎知識・解法
- 中小企業における効果的なマーケティング戦略
- 中小企業に必要な成長戦略
- 過去問解説
■-目次-■
平成29年度過去問
ダウンロード先:中小企業診断士協会 平成29年度 事例Ⅱ過去問
【与件文】
①B 社は資本金 1,000 万円、社員名、パート名の寝具小売業である。創業以来、
地方都市 X 市の商店街に階と階を合わせて 300 m2 強の売場の店舗を構えてい
る。B 社は 1955 年に現社長の父親が創業し、1970 年に現社長とその夫人である副社
長が事業を継承した。品揃えは、布団、ベッド、マットレス、ベビー布団、ベビーベ
ッド、介護ベッド、布団カバー、枕、パジャマなどである。B 社は寝具類のボランタ
リー・チェーンに加盟し、商品は同本部から仕入れている。B 社のこだわりは接客に
ある。睡眠状況を聞きながら商品を薦めるという、現社長が始めた接客は、多くの顧
客の信頼を得ている。また趣味の裁縫、刺繍の技術を生かして、副社長が作った小
物入れやトートバッグなどのノベルティも人気があり、それを目当てに来店する顧客
がいるほどである。
②現在の X 市の人口は緩やかな減少傾向にある。そして、年齢分布は図のようにな
っている。X 市の主要産業は農業とガラス製品生産である。市内にはガラス製品の
大小工場が林立し、多くの雇用を創出している。2000 年に大規模工場の一部が海外
移転し、市内経済の衰退が見られたが、近年は中小工場の若手経営者の努力により、
市内経済は回復傾向にある。2000 年頃の一時期は若年層の住民が県庁所在地に転居
することが多かった。これに対して X 市役所は若年層の環流を図り、子育てに関す
る行政サービスを充実させた。また、ここ数年は建築業も好調である。世帯同居が
減少し、核家族世帯のための建築需要が増えている。加えて、介護のための改装も増
加している。
③今日まで商店街の小売店は収益悪化と経営者の高齢化による閉店が続いている。収
益悪化の主要因は 1980 年に出店した幹線道路沿いにある大型スーパーである。しか
し、商店街の飲食店の多くは工場関係者による外食、出前需要があり繁盛している。
現在は飲食店を除くと閑散としている商店街も、高度成長期には大変なにぎわいで
あった。B 社も日々多くの来店客を集めた。しかし、丁寧な接客のため来店客に待ち
時間が生じるという問題が起きた。そこで、店舗の一角に椅子とテーブルを置き、無
料で飲み物を提供する休憩コーナーを設置した。これにより、接客中であることを見
て来店客が帰ってしまうケースが減り、売り上げは増加した。
④2000 年代以降、若年層住民の大半が大型スーパーで買い物をするようになり、B社の来店客数も大幅に減った。時間を持て余した副社長は、手のあいた飲食店経営者を集め、休憩コーナーで井戸端会議をし始めた。次第に人の輪が広がり、午前は引退した小売店経営者、昼過ぎは飲食店の経営者やスタッフ、夕方は工場関係者が集うようになった。定休日には一緒にバス旅行や映画に出かけ、交流を深めた。当然、日々集まる井戸端会議メンバーがそれほど頻繁に寝具を買うわけではないが、寝具の買い替えがあればほぼ B 社で購入している。また、他の小売店が閉店した 2000 年代以降に、化粧品、せっけん等のこだわりの日用品販売を引き継いだ。これらが店内にあるのを見て、井戸端会議メンバーが購入し、リピートする例も多い。寝具は購買間隔が長く、顧客との接点が切れやすいが、日用品は購買間隔が短いので、B 社が顧客との継続的な接点を作りやすくなった。
⑤井戸端会議は B 社が潜在的な顧客ニーズを収集する場でもあった。2010 年のある
日、井戸端会議で「買い物のために県庁所在地の百貨店まで出かけたのに、欲しいも
のがなかったときは体力的、精神的につらい」ということが話題になり、多くのメン
バーがその意見に賛同した。その頃、B 社には、ボランタリー・チェーン本部から外
出用を主とする婦人服の予約会B注Cを実施しないか、という打診があった。同チェー
ンは近年、加盟店活性化のために、寝具に加えて婦人服、婦人用ハンドバッグ、宝飾
品の仕入および販売を強化していた。開催には登録料を払う必要があり、長年寝具一
筋でやってきた現社長は婦人服が売れるイメージが湧かず、当初は断る予定であっ
た。しかし、井戸端会議の話を聞き、打診を受け入れた。期間中は店舗階の売場を
整理し、試着室を設け、臨時イベントスペースとした。ただし、スペースはそれほど
広くないため、日頃の交流を通じて、顧客の好みをよく把握している副社長が品揃え
を厳選した。予約会には井戸端会議のメンバーが多数来店し、時間によっては顧客が
会場に入れないほどであった。好評を得た予約会は、継続を望む声があり、開始から
既に数年が経過している現在もシーズンごとの予約会の売り上げは落ちずにいる。現
在の年間売り上げに占める割合はおおよそ寝具 70 %、婦人服 25 %、日用品%とな
っている。
⑥予約会が始まった頃、子育てにめどが付いた現社長の娘が店を手伝うようになっ
た。既に現社長は 70 歳近くとなり、一時は廃業を検討したが井戸端会議メンバーが
存続を強く希望し、数年内に現社長の娘が次期社長となり、事業を継承することにな
った。
⑦次期社長は保育士の勤務経験があり、保育園ごとの昼寝用布団、手作りで用意する
手さげカバンのサイズなどに関するルールを詳しく知っていた。ある日、井戸端会議
メンバーの世代B以下、「シルバー世代」というCの顧客に、孫の入園準備のアドバイス
をし、感謝されたことがあった。それをきっかけに、シルバー世代の子供世代B以下、
「子育て世代」というCの顧客が入園準備のアドバイスと商品を求め、来店するように
なった。
⑧現在も休憩コーナーに人が集うが、シルバー世代の顧客の多くはやがて介護をされ
る側の立場となり、確実に減少する。今後の対応を考えるべく次期社長は、大型スー
パーの寝具売場を視察した。視察を通じて、高品質な商品が少ないこと、従業員がほ
とんどおらず、十分な説明もできないことが分かった。そこで、次期社長は保育園の
入園準備を通じて知り合った子育て世代向けに「親と子の快眠教室」という月回のイ
ベントを開催し、親の快眠と子供を寝かしつける工夫についての教室を開始した。教
室の参加者は、後日顧客として来店するようになりつつある。
⑨B 社にとってシルバー世代に関する店内の顧客台帳や現社長達の頭の中にある情報
は貴重な無形資産である。次期社長はこれらの情報に容易にアクセスすることができ
るように情報のデータベース化を実施した。現社長が配達時に記録した住所、副社長
が記録した寝具や婦人服の購買履歴と記憶した好みを、可能な限り文字と画像にし
て、簡易型データベースに登録した。データベースはリピーターである重要顧客から
なる 100 件強の小規模なものであるが、件の情報は非常に詳細なものとなった。し
かし、活用方法は見いだせずにおり、課題となっている。
⑩B 社は、地域とその顧客に支えられて存続してきた。そのため、次期社長は事業継
続のためには、地域の繁栄が必要だと考えている。次期社長は取り組むべき施策につ
いて、中小企業診断士に助言を求めることとした。
B注C主にアパレル業界で行われるイベント。顧客が会場でサンプルを確認、試着し、
気に入ったものがあれば商品を予約できる。商品の引き渡しと支払いは後日行う。
第1問(配点 20 点)
B 社について、現在のa 自社の強みとb 競合の状況をそれぞれ 60 字以内で説明せよ。
【まず、設問文からヒントを探す】
まず、設問の制約条件を整理しましょう。設問では、「B社の自社の強み」と「B社の競合についての状況」に関して問われています。
< a >
まずは、B社の強みについて、与件文に明示されているキーワードをもとに分析して読んでいきながらも、B社と同業他社である競合についてひもとく必要があります。強味を生かして売上を伸ばしていくという事例Ⅱで前提となる、与件企業の強みをまずは読み解く問題ですね。
【与件文からヒントを探す】
事例Ⅱの中で、与件企業の強みを探し出すときは「こだわり」や「高い評価を得ている」といったキーワードをもとに探すと、与件企業が強みとしている特徴を見つけ出すことができます。事例Ⅱでは、与件企業が持つ、すでに好評を得ている技術やサービスを独自の強みとして活用し、伸ばしていくことで売上拡大を図ることが基本となります。これらを踏まえて与件分を読んでいきましょう。
【与件文に記述がある、強みに関するキーワード】
与件文の中では、B社の展開している事業内容については①段落で記述されており、そこではB社の「こだわり」について、また人気を得ている「技術」について記載があります。
★①段落
B 社のこだわりは接客にある。睡眠状況を聞きながら商品を薦めるという、現社長が始めた接客は、多くの顧客の信頼を得ている。また趣味の裁縫、刺繍の技術を生かして、副社長が作った小物入れやトートバッグなどのノベルティも人気があり、それを目当てに来店する顧客がいるほどである。
またこの問題では、B社が強みを生かしていくための戦略をとる上での強みともいえるものも明示しています。こちらにも注目したいところです。
★⑤段落
井戸端会議は B 社が潜在的な顧客ニーズを収集する場でもあった。
これ以外にもこの与件文の⑤段落では、井戸端会議によって得られる、戦略上の強みも記載されているのです。
★⑤段落
日頃の交流を通じて、顧客の好みをよく把握している副社長が品揃えを厳選した。予約会には井戸端会議のメンバーが多数来店し、時間によっては顧客が会場に入れないほどであった。
実は、この後の第2問を読むと新たに婦人用ハンドバッグの予約の開催を成功させるための施策について問われています。井戸端会議があることで、メンバーのニーズを収集し品揃えの戦略に生かせる点は、予約会を成功させるうえでも非常に強みとなるといえます。
診断士の事例では、設問全体の全体最適を見渡しながら、解答の骨子を組み立てていくことが非常に重要です。与件企業の強みは、冒頭のところで記述されていることが多く、冒頭の段落から一点集中して抜き出すことをしてしまうケースも多いのですが、こういった形で、他の設問文もにらみながら、全体を見渡して、ヒントを探していくことが重要といえます。
①段落、⑤段落でそれぞれ示された強みをまとめますと、
・睡眠状況を聞きながら顧客に提案できる接客力
・次期社長の裁縫、刺繍の高い技術
・井戸端会議で顧客のニーズを収集できる点
となります。解答では、上記3点を盛り込んで解答することが望ましいといえます。
では次に、競合の状況についても整理していきましょう。
【まず、設問文からヒントを探す】
< b >
この設問のbでは、シンプルに競合の状況について問われています。まず、どのような業者が競合にあたるか、また競合はどのようなサービスを提供しているのか、について、与件文を読み解いて整理していきましょう。
【与件文からヒントを探す】
競合については以下段落に記載があります。
★④段落
2000 年代以降、若年層住民の大半が大型スーパーで買い物をするようになり、B社の来店客数も大幅に減った。
ここでは、B社の顧客を奪ったと見受けられる記載があります。競合という言葉を使ってはっきりとは明示していない部分でありながらも、ここで記載されている大型スーパーの台頭によってB社の来店客数が大幅に減ったというところから、ライバル、つまり競合となりうる業者であることがわかります。このことから、競合については、この大型スーパーについて記載するのが正しいといえます。
第2問(配点 25点)
B 社はボランタリー・チェーン本部から新たに婦人用ハンドバッグの予約会の開催 を打診された。B 社は現在のデータベースを活用しながら、この予約会を成功させよ うと考えている。そのためには、どのような施策を行うべきか。120 字以内で助言せ よ。
【まず、設問文からヒントを探す】
第2問についても、設問の制約条件を整理しましょう。
この問題では「現在のデータベースを活用しながら」の部分から、施策の中でデータベースを活用している、という点を盛り込む必要があります。どのようなデータが必要かは、もう与件文を読んで整理することとしましょう。
施策についてですが、事例Ⅱで得点率を上げるためには、お作法のところでも学んだように、「誰に対して何をどのように売るか、そしてそれがどのような効果を生み出すのか」という視点で解答する必要があります。
この問題でも、予約会というイベントを成功に導くための施策について問われているため、予約会で誰をターゲットとするのか、(何を販売するかは、婦人用ハンドバッグと指定があります)どのように集客しどのように販売するか、といった視点で、整理するようにしましょう。
【与件文からヒントを探す】
先ほど申し上げたようにこの問題では施策について解答する必要がありますので、「誰に」「何を(こちらは指定があり婦人用ハンドバッグ)」「どのように集客・販売するか」といった点を整理します。
何度もお伝えしますが、事例Ⅱでは、与件企業が持つ強みを最大限生かすことが重要になります。この問題でも、ターゲットとしてどの顧客層に絞り込みすると、与件企業の強みが生かせるかを考えます。
これは第一問で整理した強みを見てみるとヒントがありそうです。B社の強みは、以下。
・睡眠状況を聞きながら顧客に提案できる接客力
・次期社長の裁縫、刺繍の高い技術
・井戸端会議で顧客のニーズを収集できる点
この中でも、「井戸端会議でで顧客のニーズを収集できる点」が、ターゲット顧客の絞り込みを行う上でも活用できそうな強みになりそうです。
次の部分では、井戸端会議のメンバーをターゲットとして、過去に婦人服の予約会を開催し成功に導いた実績が記載されています。
★⑤段落
その頃、B 社には、ボランタリー・チェーン本部から外出用を主とする婦人服の予約会Bを実施しないか、という打診があった。同チェーンは近年、加盟店活性化のために、寝具に加えて婦人服、婦人用ハンドバッグ、宝飾品の仕入および販売を強化していた。開催には登録料を払う必要があり、長年寝具一筋でやってきた現社長は婦人服が売れるイメージが湧かず、当初は断る予定であった。しかし、井戸端会議の話を聞き、打診を受け入れた。期間中は店舗階の売場を整理し、試着室を設け、臨時イベントスペースとした。ただし、スペースはそれほど広くないため、日頃の交流を通じて、顧客の好みをよく把握している副社長が品揃えを厳選した。予約会には井戸端会議のメンバーが多数来店し、時間によっては顧客が
会場に入れないほどであった。好評を得た予約会は、継続を望む声があり、開始から既に数年が経過している現在もシーズンごとの予約会の売り上げは落ちずにいる。
過去に打診があり開催した婦人服の予約会は大好評で、特に井戸端会議のメンバーが多数来店し大成功となった、ということですが、ここからわかることは、
この予約会で井戸端会議メンバーから婦人服の購入まで促したということで、井戸端会議メンバーがこの婦人服の予約会で取得した、顧客でもある井戸端会議メンバーの好みなどのニーズを拾えていることもうかがえます。
診断士二次試験では、解答の要素についてもできる限り具体的にまとめる必要があります。過去に行った婦人服の予約会で得られた、井戸端会議メンバーの服の購入履歴に基づいた、メンバーの好みの傾向等を活用できそうです。
ですので、予約会での品ぞろえは、これらのデータから引き出せる好みに応じた商品を販売すべきだということがわかります。
今回の設問では、データベースを活用しながら、といった制約条件があります。過去に開催した婦人服の予約会での販売における顧客の購入履歴からも、今回ターゲットとする井戸端会議メンバーの好みを分析することができます。
さらに、以下には、データベースについて直接触れている部分があります。
★⑨段落
現社長が配達時に記録した住所、副社長が記録した寝具や婦人服の購買履歴と記憶した好みを、可能な限り文字と画像にして、簡易型データベースに登録した。
この部分の前で、「B 社にとってシルバー世代に関する店内の顧客台帳や現社長達の頭の中にある情報は貴重な無形資産である。」とありますが、ここからこのデータベースで得た情報は貴重な貴重な無形資産、つまり経営資源でもあることがうかがえます。
データベースを活用するうえで、配達時に現社長が記録した住所なども、有効でしょう。例えば住所を活用して、DMを送付するなどが考えられます。
さらに、⑨段落の文末には以下の記載がある。保有する有用な無形資産であるデータベースをうまく活用できていない点を、課題として明示している。
★⑨段落
データベースはリピーターである重要顧客から
なる 100 件強の小規模なものであるが、件の情報は非常に詳細なものとなった。しかし、活用方法は見いだせずにおり、課題となっている。
診断士二次試験の事例では、与件企業の課題を適切に読み取り、課題を解消するための施策を提案することが必要ですが、まさにこの第二問では、課題として与件文で明示されている、データベースの活用の施策について、問われています。
最初にも申し上げたように、事例Ⅱで施策について解答する問題がある場合、「誰も何をどのように販売し、どのような効果があるか」といった視点で解答を書くことで、得点率を高めることができます。
今回は、何を売るかは設問文にて「婦人用ハンドバッグ」として指定されていますから、予約会を誰をターゲットとして開催するか、また強みを生かしてどのようなものをどんなふうに販売するか、そしてそれによってどのような効果が得られるか、といった点を、設問文の制約にもある「データベースのどのデータを活用するか」という制約を加えてまとめましょう。
第3問(配点 30 点)
地域内の中小建築業と連携しながら、シルバー世代の顧客生涯価値を高めるための 施策について、120 字以内で助言せよ。
【まず、設問文からヒントを探す】
まず、この設問の制約条件を読み解きましょう。ここでは「地域内の中小建築業と連携」とあります。この制約条件の中で、B社が単独で行う施策や、建築業以外の業界の他社と協業する施策を解答すると、制約条件を適切に読み取れていないとして得点できなくなりますので、こういった細かい制約条件を見逃さず整理しましょう。
また、「シルバー世代の顧客生涯価値」とありますので、解答すべき施策のターゲット顧客としては、シルバー世代を設定すべきですね。
では「顧客生涯価値」とは何でしょうか?顧客生涯価値とは、「顧客生涯価値」を意味し、1人の顧客が長期的に見てどれほどの利益をもたらしたかを示すマーケティング指標のことを指します。例えばリピート利用頻度が増えれば、顧客生涯価値も高めることができます。企業が利益を高めていくうえでも、リピート率等を高めて顧客生涯価値を高めて固定客として離さないようにすることが重要ともいえます。
この設問では、シルバー世代の顧客に対して、リピート率を高め、固定客化につなげていけるような施策をまとめるとよさそうです。
【与件文からヒントを探す】
先ほど整理したように、この設問で問われているターゲット顧客はシルバー世代です。シルバー世代に対して、どのようなサービスを提供すべきでしょうか。
中小建築業と連携する、という制約条件がありますから、まず建築サービスとしてどこに需要があるのか、シルバー世代においてニーズがある課題についてみていきます。
建築業と連携してどのようなサービスを提供すべきかは、与件文の以下部分からヒントを引き出せそうです。
★②段落
ここ数年は建築業も好調である。世帯同居が減少し、核家族世帯のための建築需要が増えている。加えて、介護のための改装も増加している。
今回はシルバー世代向けのサービスを検討する必要がありますので、ここでの介護のための改装、といったところをヒントに施策を組み立てていければよさそうです。
さらに、顧客生涯価値を高める、つまりリピート率を高める施策をまとめないといけません。何を売ってリピート率を高めるべきか検討しなければいけませんが、これは事例Ⅱであり、強みを活用して売上拡大を図る施策を検討しなければいけませんので、B社のサービスの強みである、寝具の販売、日用品の販売のノウハウを生かすべきだということが推測できます。
顧客のリピート購買を促すサービスを検討する必要がありますが、寝具や日用品であれば、リピート購買や、もしくは定期的なメンテナンス等によりリピート購買を促せそうです。
※なお、顧客のリピート率を高めるための施策としてメンテナンスのサービスなどを提案することは、事例Ⅱでも頻出ですので、解答組み立てのパターンの一つとしても覚えておくとよいでしょう。(別立ての動画でも、説明しています。)
建築業と連携しすでに需要がある、介護向け改装サービスを行い、その顧客に対して、自社の強みでもある寝具や日用品の販売とメンテナンスサービスと組み合わせた施策をまとめると、高い得点率が望めるでしょう。
第4問(配点 25 点)
B 社は今後、シルバー世代以外のどのセグメントをメイン・ターゲットにし、どの ような施策を行うべきか。図を参考に、120 字以内で助言せよ。
【まず、設問文からヒントを探す】
まず、この設問の制約条件を読み解きましょう。ここでははっきりと、ターゲットが「シルバー世代以外」と明示されています。
ですので、シルバー世代をターゲットとして選ぶのは、当然ですがNGですし、設問の意図をきちんと読み取れていないとして、得点が見込めないでしょう。
また、ターゲット顧客について解答する際には、「・年齢層・性別・どのようなことに興味を持っている顧客層か」の視点が盛り込まれていなければいけません。
またこの問題で問われているのは施策ですから、いつもの通り、「誰に何をどのように売り、どのような効果を得るか」といった視点を盛り込む必要があります。
【与件文からヒントを探す】
まず、誰をターゲットとするのかを、「シルバー世代以外」というところより解像度を上げて絞り込みしていきたいと思います。
今回は、与件文が提示している図に着目してみたいと思います。こういった、わざわざ図を用意して問題文に掲載している点が、解答者に特に読んでほしい、設問のヒントに使ってほしいといった意図が読み取れます。
図を見ると年齢別の、X市と全国の人口構成比が、二本のグラフによって表現されています。ここから、B社のあるX市の、全国平均と比べて多い年齢層が読み解け、そこからターゲット顧客とすべき年齢層をどの層にすべきか、ヒントが得られると思われます。X市の特徴を読み解くのであれば、全国のグラフと大きく異なっている点を探す必要がありそうです。
図で見ると、30代前半あたりから後半にかけて高いです。一般的な子育て世代ともいえるでしょう。
★②段落
これに対して X 市役所は若年層の環流を図り、子育てに関する行政サービスを充実させた。
と記載があることからも、子育てサービスの拡充によって、子育て世代の人口増を図ったとも言えます。
図以外に、与件文からも読み取っていきましょう。以下のような記述から、狙うべきターゲット層のヒントが得られます。
ターゲットが絞り込みできたところで、どのような製品・サービスを売るかについても、B社の強みを生かせるポイントをにらみつつ、与件文からヒントを読み取っていきましょう。
さらに、
★⑦段落
次期社長は保育士の勤務経験があり、保育園ごとの昼寝用布団、手作りで用意する
手さげカバンのサイズなどに関するルールを詳しく知っていた。ある日、井戸端会議
メンバーの世代B以下、「シルバー世代」というCの顧客に、孫の入園準備のアドバイス
をし、感謝されたことがあった。それをきっかけに、シルバー世代の子供世代B以下、
「子育て世代」というCの顧客が入園準備のアドバイスと商品を求め、来店するように
なった。
★⑧段落
現在も休憩コーナーに人が集うが、シルバー世代の顧客の多くはやがて介護をされ
る側の立場となり、確実に減少する。今後の対応を考えるべく次期社長は、大型スー
パーの寝具売場を視察した。視察を通じて、高品質な商品が少ないこと、従業員がほ
とんどおらず、十分な説明もできないことが分かった。そこで、次期社長は保育園の
入園準備を通じて知り合った子育て世代向けに「親と子の快眠教室」という月回のイ
ベントを開催し、親の快眠と子供を寝かしつける工夫についての教室を開始した。教
室の参加者は、後日顧客として来店するようになりつつある。
この部分もみていきます。
⑦段落部分では、子育て世代の潜在ニーズがみえるのではないでしょうか。入園準備のアドバイスと商品というのが、子育て世代が、社長が保育士の経験もあり知識豊富であるB社にとって需要があるということが読み取れます。
また⑧段落においては、子育て世代向けに実施したイベントについて記載があります。さらにそのイベントを行ったことによって、次の来店につながり固定客化も見込めるのです。
子育て世代に向けて、寝かせ付けのイベントが功を奏したというところから、逆に子供の寝かし付けに、多くの子育て世代はサービスや製品に課題解決を求めているという状況も読み取れるのではないでしょうか。
例えばイベントや、製品販売などが考えられます。
ここで具体的にどのようなもの、サービスを売るかをより具体的にしていきたいですが、やはり重要なのは、B社の強みがきちんと反映できているかどうか、といった点です。
繰り返しになりますが、子育てに関連するB社の強みとしては以下のところから、次期社長の保育士経験を抜き出せます。過去に
★⑦段落
⑦次期社長は保育士の勤務経験があり、保育園ごとの昼寝用布団、手作りで用意する
手さげカバンのサイズなどに関するルールを詳しく知っていた。ある日、井戸端会議
メンバーの世代B以下、「シルバー世代」というCの顧客に、孫の入園準備のアドバイス
をし、感謝されたことがあった。それをきっかけに、シルバー世代の子供世代B以下、
「子育て世代」というCの顧客が入園準備のアドバイスと商品を求め、来店するように
なった。
今回組み立てようとしている施策は、過去にイベントを開催して好評だった、子育て世代の既存顧客層に向けて関係性強化を図ることが有効ではないでしょうか。
次期社長の強みともなりうる保育士の勤務経験からの豊富な知識を生かしながら、例えば刺繍などの親子向けのイベントを開催したり、もしくは子供向けの用品の販売など、の観点で、顧客との関係性を強化していく方向でまとめられるとよいでしょう。
本日は、事例Ⅱの解説を行います。
このコースで学べる事
- 中小企業診断士二次試験事例Ⅱ合格に必要な基礎知識・解法
- 中小企業における効果的なマーケティング戦略
- 中小企業に必要な成長戦略
- 過去問解説
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