このコースで学べる事
- 中小企業診断士二次試験事例Ⅰ合格に必要な基礎知識・解法
- 中小企業の人事管理についての知識
- 中小企業の組織管理についての知識
- 過去問解説
ダウンロード先:中小企業診断士協会 令和元年度 事例Ⅰ過去問
第1問(配点 20 点)
A 社長がトップに就任する以前の A 社は、苦境を打破するために、自社製品のメ ンテナンスの事業化に取り組んできた。それが結果的にビジネスとして成功しなかっ た最大の理由は何か。100 字以内で答えよ。
・与件文
時系列として、「A社長がトップに就任する以前のA社」の状態からこれまで、自社製品のメンテナンスの事業化に取り組んだ結果成功しなかった要因を聞いている。そのため、A社長がトップに就任する以前のA社の状況についても、与件文を整理しながら把握する必要があります。
・解答すべきポイント
「最大の理由は何か」を聞かれています。最大という表現は、最も大きい、つまり一つしかありませんので、理由を複数回答するのではなく、一つだけ解答する必要があります。
・与件文から
上記のポイントに沿って、与件文からヒントを探りましょう。与件文では、以下の部分がこの設問の解答を組み立てるヒントになります。
しか し、1980 年代半ばに公企業の民営化が進んだ頃から向かい風が吹き始め、健康志向 が強まり喫煙者に対して厳しい目が向けられるようになって、徐々にたばこ市場の縮 小傾向が進んだ。
しかも時を同じくして、葉たばこ生産者の後継者不足や高齢化が急速 に進み、葉たばこの耕作面積も減少するようになった。
要するに、トップに就任する以前からメンテナンスの事業化に取り組んでも成功できなかった理由は、メンテナンスの対象の葉たばこ関連事業自体が衰退していたためといえます。
第2問(配点 20 点) A 社長を中心とした新経営陣が改革に取り組むことになった高コスト体質の要因 は、古い営業体質にあった。その背景にある A 社の企業風土とは、どのようなもの であるか。100 字以内で答えよ。
・解答すべきポイント
企業風土はどのようなものか、という論点を述べる必要があります。
・与件文から
また、高コスト体質の要因は古い営業体質、と示されているため、このことから、与件文からこうコストにつながる営業体質について述べられている部分を抽出して、そこから「どのような企業風土が理由につながっているのか」といった視点で回答をまとめることが重要です。
与件文では、以下の部分が、高コストで古い営業体質の企業風土について述べている部分になります。
高コスト体質
減価償却も済み、補修用性能部品の保有期間を過ぎている機械の部品であっても客から依頼されれば個別に対応していたために、膨大な数の部品が在庫となって収益を圧迫していたのである。
古い風土
営業所の業 務が基本的に手書きの帳簿で処理され、全社的な計数管理が行われないなど、前近代 的な経理体制であることが明らかとなった。
新し い事業に取り組むことを、古き良き時代を知っている古参社員たちがそう簡単に受け 入れるはずもなかった。
第3問(配点 20 点) A 社は、新規事業のアイデアを収集する目的で HP を立ち上げ、試験乾燥のサービ スを展開することによって市場開拓に成功した。自社製品やサービスの宣伝効果など HP に期待する目的・機能とは異なる点に焦点を当てたと考えられる。その成功の背 景にどのような要因があったか。100 字以内で答えよ。
・解答すべきポイント
新規事業を展開するにあたって、市場開拓に成功した要因について聞かれている。
また制約条件として、「自社製品やサービスの宣伝効果などHPに期待する目的・機能とは異なる点」に焦点を当てる必要があります。
・与件文から
市場について、ターゲットや、ターゲットのニーズについて述べられている部分を与件文からみつけてみましょう。
(ターゲット、ニーズ)
生産農家だけでなく、それを取りまとめる団体のほか、乾物を販売し ている食品会社や、漢方薬メーカー、乾物が特産物である地域など、それまで A 社 ではアプローチすることのできなかったさまざまな市場との結びつきもできたのであ る。
他にも、成功の要因として示されていると思われる記載があります。
もちろん、営業部隊のプレゼンテーションが功を奏したことは否めない事実であ る。
第4問(配点 20 点) 新経営陣が事業領域を明確にした結果、古い営業体質を引きずっていた A 社の営 業社員が、新規事業の拡大に積極的に取り組むようになった。その要因として、どの ようなことが考えられるか。100 字以内で答えよ。
・解答すべきポイント
古い営業体質を引きずっていた新規営業陣が、新規事業の拡大に積極的に取り組むようになった要因について解答する必要があります。時系列としては、古い営業体質を引きずっていた段階のところと、何かのきっかけで営業に積極的に取り組むようになったそのきっかけのところを与件文から探す必要があります。
「危機感の中でスタートした・・」の段落の、「~経営改革を本格化させたのである。」部分以降で具体的にどのような改革を行ったかが記載されているので、抽出してみましょう。
・与件文から
「危機感の中でスタートした・・」の段落のところですぐ、リストラについて記載があり、
「これを乗り越えたことで従業員の年齢が 10 歳程度も引き下がり、コス トカットした部分を成果に応じて支払う賞与に回すことが可能になった。
の部分で、
リストラを実施したことによって、コストカットした部分を賞与に回すことができた
と記載があります。
賞与を上げることで、組織管理の賃金管理のところでも学びましたが、成果報酬制度を導入することで、営業社員のモチベーションを向上することが期待できます。コストカットした結果賞与を支給し、その結果社員のモチベーション向上にもつなげられたのが要因の一つであろう、と思われます。
また、賞与以外の施策も見られます。「こうして社内整備を測る一方で・・」の段落にて、
自社のコアテクノロジーを「農作物の乾燥技術」と 明確に位置づけ、それを社員に共有させることによって、葉たばこ乾燥機製造に代わ る新規事業開発の体制強化を打ち出した。
とあります。ここで、体制を強化したと思われます。
第5問(配点 20 点) A 社長は、今回、組織再編を経営コンサルタントの助言を熟考した上で見送ることとした。その最大の理由として、どのようなことが考えられるか。100 字以内で答えよ。
・解答すべきポイント
最大の理由を聞かれているので、「最大」とは複数あるものではなく、一つしかないことを踏まえ、この設問では一つの理由について述べる必要があります。
また、設問文には「組織再編を経営コンサルタントの助言を熟慮したうえで」とありますので、組織管理の視点で解答する必要があります。
このように事例Ⅰの問題では直接的な、わかりやすいヒントが与件文にはないですが、与件文にあるものと、フレームワークをもとに、求められている解答を組み立てる必要がございます。
ただ、組織再編に関することは、与件文の後半部分に記載されています。A社が創業当時から現在も機能別組織であることが記されていて、さらに設問文から、組織再編自体は見送っていることから、「機能別組織である理由」つまり、機能別組織とは逆の、「事業部別組織」にしない理由がかならずあるはずです。
ここまで推測できたら、後は機能別組織が適している企業の特徴を思い出して、機能別組織がもたらすメリットを踏まえながら解答を組み立てることが重要です。
※この与件企業の特徴として、親族経営という特徴がありますが、与件文のなかに親族経営のメリット・デメリット等について言及しているところはないので、重要度は低いと思われます。
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